【7】【地域の取り組み】CONNECT_「アートで こころを こねこねしよう」 アイ・コラボ:このセッションは京都で開催されている「CONNECT_(コネクト)障害のある人もない人も、多様性や共生社会について共に考える18日間」のご紹介です。 CONNECTは2020年から障がい者週間に毎年開催されています。 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は関係なく、障がい者週間に開催されていらっしゃるのですが地域に優れた取り組みとしてご紹介させていただきたいと思います。 CONNECTの皆さんとチームアイ・コラボのつながりは昨年サイト公開前に時代工房 柴田さんのご紹介でユーザー評価をさせていただいたのがきっかけとなります。 ユーザー評価の際にサイトを拝見し、複数の美術館、博物館が一緒に多様性、共生社会に取り組んでいるイベントだということを知り、ぜひ祭典でご紹介させていただきたいとお願いしてご登壇いただけることになりました。 CONNECTの主催は文化庁、京都国立近代美術館ということで、京都国立近代美術館からは松山さんにお越しいただいています。 では松山さん、自己紹介のほどお願いします。 松山:はじめまして、京都国立近代美術館の松山と申します。 普段は学芸課で教育普及の仕事をしています。具体的には学校団体の受け入れや展覧会に関連したいろいろなワークショップやイベントの企画を行なったり、子ども向けのジュニアガイドを作ったりといった仕事を担当しています。 最近ではさまざまな方達に美術館をもっと開いていくための取り組みやアクセシビリティといった活動にも関心があり、そのような活動にも少し関わるようになってきています。 今日はよろしくお願いします。 アイ・コラボ:ありがとうございます。よろしくお願いします。 そして共催の京都新聞からは京都新聞COMの滝山さんにお越しいただいています。 滝山さん、自己紹介をよろしくお願いします。 滝山:皆さん こんにちは。 京都新聞の滝山と申します。普段は事業推進局という、主に美術館での展覧会やスポーツの大会、企業や行政と一緒に連携したイベントの企画運営など、いわゆる新聞社が主催でやっている事業の運営をしたり企画したりする部署にいます。 基本的には何でも屋さんで、CONNECTについては実は美術館だけではなくて地域の複数の施設が連携することで、それぞれをまとめる事務局が必要だということで文化庁から委託を受ける形で事務局を務めていました。今日はよろしくお願いいたします。 アイ・コラボ:ありがとうございます。そして祭典の公式サイトの制作にもご協力いただいている時代工房から柴田さんにもご参加頂いております。柴田さんはCONNECT2022のサイトの作成も担当されているということで、自己紹介のほどよろしくお願いします。 柴田:有限会社時代工房の柴田です。有限会社時代工房は2004年創業の京都の街のweb屋さんで、webサイトの制作やアクセシビリティの試験の受託をしています。また2018年からはwebアクセシビリティ基盤委員会で会員組織下のもと活動しています。 ご紹介に会った通り2022年のCONNECTのウェブサイトを弊社で制作に関わらせて頂きました。今日はよろしくお願いします。 アイ・コラボ:ありがとうございます。 まずはじめにCONNECTを開催することになったきっかけを松山さんにお伺いしたいのですが、松山さんお願いします。 松山:CONNECTは「障害のある人もない人も、アートを通して多様性や共生社会について考える」をコンセプトに2020年度から始まりました。 このプロジェクトの前身は東京で開催されていた「ここから展」という文化庁が主催の展覧会になります。2016年から19年まで開催されていたもので、障害のある方々の表現を紹介したり、障害にまつわるデザイン、 例えば義足や競技用の車椅子といったもの、または障害をテーマにした漫画やアート作品などさまざまなものが展示されていました。 この「ここから展」の次の展開を探ろうということになり、文化庁の担当の方々が京都で次のかたちを模索したいということで京都国立近代美術館と話し合いを重ねていきました。 美術館がある岡崎公園というのは、美術館もありますが図書館や動物園や劇場といったさまざまな文化施設が集まった、京都の文化ゾーンとも言える地域です。 なのでこの地域の特徴を生かして、ジャンルの違ういろいろな文化施設がつながることで障害のあるなしに関わらず、芸術や文化を一緒に楽しむような環境を整えたり、 ワークショップや展示や講演会などを開催していこうということで2020年から取り組みを進めてきました。 少し過去の様子の写真をご覧いただきたいとおもいます。 今、映っているのが一年目の2020年度の写真です。これは京都市京セラ美術館で行った展示の風景です。この時のCONNECTのテーマが「CONNECT_芸術・身体・デザインをひらく」というテーマで実施をしました。 こちらは2021年度に行ったワークショップの一環になります。2021年度は「CONNECT_つながる・つづく・ひろがる」ということをテーマにしています。 これは美術館に展示された作品を視覚障害の方と目の見える方が一緒に触れて鑑賞するワークショップですけれども、こういった活動も行ってきました。 2022年、昨年度は「アートで心をコネコネしよう」というテーマで文化施設が繋がって取り組みを行ってきました。簡単ですが、以上になります。 アイ・コラボ:ありがとうございます。新しい形としてのいろいろな取り組みをされてきたんだなと思いながら聞いてて、障害あるなしに関わらずという点が僕はすごい素敵だなと感じました。 今回の祭典のテーマは「アクセシビリティ・サイクル」とさせて頂いています。 「人とのつながりが世界を変え続ける」というサブタイトルで、一人の思いや取り組みが起点となってそれに賛同する人がどんどん増えて輪になっていく、 という思いを込めております。地域でがんばっていらっしゃる一人一人の想いをお伝えしたいと思ったので、今回は皆さんにご出演いただいたという経緯になっております。 さて2022年はサイトのアクセシビリティにも気を配っているということで、滝山さんから時代工房へサイトの依頼をされたと伺っております。その流れを滝山さんにお伺いしたいなと思っております。 またそれを受けた時の柴田さんのご感想などもお聞きしたいなと思っております。 まずは滝山さんからお願いできればと思います。 滝山:滝山です。障害のある方もない方も楽しめる、一緒に考えるという事は当然ながら障害当事者の方々には参加をしてもらう大前提がありますが、 我々普段の美術館とかイベントやってるからわかるんですが、それは「参加とは何だろう」という話で、ものすごく多面的な話なんです。 一人の表現者としての障害者の方とかもおられるし、会場に来られる方や観客であったり、鑑賞者である方もありますし、そもそもこういうことを一緒にやってますということを知ってもらうために、 どういう伝え方をしないといけないのか、情報の受け手側、それと一緒にイベントを作る仲間としての発信の側、それぞれで考えることが全然違っています。 さらにいうと施設なのでハードの面でどうするのかと、それを解決するソフトをどうするのかというのは考えることが本当にたくさんあって、最初の一年、二年というのは本当に手探りで進めてきました。 今言ったように美術館、図書館、動物園も文化施設ではあるんですけれども、福祉の専門家ではないので、みなさん正直「来て欲しいけど、どうやって受け入れ態勢を作ったらいいのかわからない」というところからのスタートでした。 ですので実は3年目にしてようやくwebまで気が回ったというのが正直なところで、本当に柴田さんを見つけてホッとしたっていうのが正直なところです。 アイ・コラボ:では柴田さんの方にも依頼を受けた時のご感想などお伺いできればと思っています。よろしくお願いします。 柴田:滝山さんたちからお声がけいただいた時から、あと仕事が始まってからもそうなんですけど一貫したした印象があります。 アクセシビリティは取り組まなければいけない人が、言葉が悪いんですが、言われたからやることがしばしばあるんですが、今回のCONNECTの案件は、 ものすごく内発的な熱の高さが高くて「なんとかしたいけど全然わかない」という勢いと「なんとかしたい」という勢いは、ものすごい最初から最後まで強かったという印象がありました。 イベントが障害者当事者に関わるということの責任感というか、そういう思いからちゃんとしなければいけないっていう気持ちが高かったのかなという印象です。 アイ・コラボ:ありがとうございます。 滝山:これは障害当事者が来たわけではなく、実はこの車椅子に乗ってる方はおそらく図書館職員と、CONNECTに参加している施設のみなさんです。webアクセシビリティに限った話じゃないんですけど、 先ほど説明したみたいに「障害者の方が来たらどうやって対応するんだ」「車椅子の人はどうなんだ」「視覚障害の人はどうなんだ」「聴覚障害の人はどうするんだ」というのは 全部クリアにはできないのでやれることをやってきましょうと参加者が集まって勉強会みたいな事はずっとしてきました。 柴田さんには2022年度のCONNECTの勉強会では講師として「webを作る時はこういうことを気にかけるんだ」ということもお話ししてもらっています。 この時はどちらかというと、劇場での鑑賞体験を確保するためにアクセシビリティをどうするかがこの写真の分なんですけれども、柴田さんの話にしてもこういった勉強会にしてもそうなんですが、 それぞれの施設の皆さんがノウハウをつけていくっていうことと、あとみんなで集まって考えても結構どうにもならないことが多くて。 専門家の意見を参考にしながらやれるのは、本当に効率的に進められるということがありました。 その辺がCONNECTでアクセシビリティをあげていこうという取り組みに集中できた理由になったのではないかと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。確かに熱量が高いというのはやっぱり一番大きいところだと思いますし、熱量と比例して体験会や勉強会を開いているというのは僕たち当事者としても知っていただく、 どうしたらいいか考えて頂いてるというのはすごい嬉しい気持ちになります。 滝山:誰とは言わないですが、反省会が結構大変なんです。「来年はここを直すぞ」っていうのがしっかり出てくるタイプの事業です。でもそれは別に悪い話ではなく、いい意味でもそういうところがあるのかなと思いますね。 アイ・コラボ:そうですね。偉そうなこと言える立場ではないですけど、反省が出る事は熱量とともにやっぱりいろいろ考えてくださってるという事だと思います。 それをどう反映するのかも、また難しいことではあると思うんですけど、反省が出るのはすごい良い傾向なんじゃないかなと、ちょっと偉そうになりますが、思います。ありがとうございます。 ユーザー評価や勉強会、体験会というお話があったと思うんですけども、障がいのある人のユーザー評価や現場での勉強会で出てきた意見などで、何か印象に残っているものがあれば、ぜひお聞きしたいと思います。 松山さん何かございますでしょうか。 松山:そうですね。さっき滝山さんが少しおっしゃっていた、22年度の研修の時にまさに柴田さんと板垣さんに来ていただいてwebアクセシビリティのユーザーテストの話をして下さいました。 その時は21年度のウェブサイトを見て「こんなフィードバックがありました」というようなお話をしていただいたと覚えてるんですが、その時、その研修を受けるまで私は正直ユーザーテストというものが存在するということすら知らなかったので、こんなものがあるんだいうこと。 そのやり方というか、例えばあるCONNECTのサイトのこのページを見て「この情報までたどりついてください」というタスクを出して、それに対して例えば「視覚に障がいのある方はこういう風に操作されて、こういう風にフィードバックがありました」とか、すごく客観的に、データでわかりやすく示していただいたというのがかなり衝撃というか、当事者の方がどう思ってるか知りたいという思いはあったんですが、こういう形ではっきりしっかり見せていただけるんだというところはかなり驚きがありました。その印象がとても強く残っています。 アイ・コラボ:ありがとうございます。では次に滝山さんお願いします。 滝山:この件については柴田さんからご提案をいただいてやりまして、僕も松山さんと一緒で柴田さんにご提案されるまで、まずそんなものがあるという想像すらしてなくて。 本当にそんなことしてくれるんですかっていう発言をしたと思います。 後で少し話すかもしれませんが、3年間やってるんですが最初の2年間ってなかなか、例えば情報保障はがんばってしたけれども必要な人があまり来なかったということが、すごく反省としてあった。 せっかくがんばったんだから来てほしいなっていうのがあって。 そうした時にみなさん本当のところはどう思っているのかとか、実際に体験してみる、やってみるってどういうことなのかという、とっかかりの作り方って結構難しかったというか、 なかなかなかった中で、一生懸命考えているよりもさっさと見てくれるんだっていうので、本当にありがとうございますという感じでした。 あとただ3年間、実は事務局は京都新聞やらせてもらってるんですけれども、webサイトの制作の責任は常に我々にあったので、正直本当にドキドキしてました。どんなことを言われるんだろうっていうのは。 アイ・コラボ:ドキドキはあったと思いますね。では次に柴田さん、ご意見があればお願いします。 柴田:今回の案件にご参加の美術館、施設の皆さん、京都新聞の方々も当事者の意見を聞くことにすごく強い関心を最初から持っていて。 アクセシビリティってついたら何でも買ってくれるお客さんを相手にしてるデパートの店員みたいな気分で(笑) ユーザーテストといったら「何それ興味ある!」、アクセシビリティの検証「何それ!」って何でも買ってくれるんですね。 それは置いといて、ユーザーテストはすごく今回は相性がいいお話だなと思い、提案させてもらいました。 アクセシビリティの検証でわかるのは、とりあえず検証した段階ではバリアがない、困らせる要素がないということがアクセシビリティの検証でできるんですが、 使ってみて実際使いやすいか、わかりやすいかというのは、やはりユーザーテスト。両軍の話なんですね。 それについてアイ・コラボ神戸の人たちにお願いすれば、当事者の大変「生」の、生々しい意見が聞けるので。 しかも今回は書類ではなく「発表」のかたちでやったので、なかなかこれも珍しい機会だったんじゃないかと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。さきほど柴田さんにもおっしゃっていただいたとおり、アイ・コラボが今回ユーザー評価を、当事者が実際触ってみてどうかというのをさせていただいて。 言い方は悪いかもしれないけれど先ほどおっしゃったとおり「生々しい」意見、評価をして、好き勝手言うんですよ。 やっぱり。「ここが使いにくい」「ここがわからなかった」という、でもそれが実際の本当に生々しい意見であってそれを改善することによって、評価した彼には見やすくなったり。 実際に評価した後に評価者が京都国立近代美術館を訪れたらしいんですよ。 なのでやはり実際に出向くことに対しての始まりはウェブサイトですし、ウェブサイトでしっかり情報を与えていただくことによって、当事者もウェブサイトも楽しめて現地も楽しめる。 すごい良い効果ではあるのかなと感じました。 先ほども言わせてもらったんですが、事前に情報を知ってから行くのがより一層楽しめたということなんですけども、 障害のある人もない人も楽しめる工夫などをお聞きしたいと思います。まずは松山さんお願いしてもよろしいでしょうか。 松山:そうですね。 板垣さんにCONNECTの良さですねと教えていただいて、とてもなんかホッとした部分もあるんですが、CONNECTは障害のある人もない人も一緒に同じ場を共有して同じ体験をして意見を交わしたり、 時間を一緒に過ごすことをどのプログラムにおいてもなるべく実現させようというところで、これは1年目から継続して取り組んできています。 ただ、先ほど滝山さんの話にもありましたが、やっぱり最初の一年目は私たち美術館も含めて、どの施設の方もこういう取り組みに本腰を入れてやった経験が少ないという方も多くいる中で、 少しずつ積み上げながら、だんだん当事者の方にも企画者側に入って頂きながら、ちょっとずつ失敗しては学びみたいな、そういう繰り返しをしながら3年続けてきたと思っています。 昨年度の事例を写真をご覧いただきつつ、ご紹介出来たらと思います。 昨年、美術館の一階のロビーの中に「こねこねの中庭」という空間を作りました。 普段は何もないロビーの空間を、休憩くつろぎスペースや展示スペース、作品を作って遊べるようなスペースということで設えました。 ここにさまざまな人たちの表現、「もの作ること」という営みを紹介するという展示をしました。 例えば、いくつかお題をつけたんですけど「こねくりまわす」というテーマでは、写真の左に写っているのが、粘土をこねながら人間の手、足とか目玉といった器官が組み合わせられたような妖怪みたいな、 なんだかわからない生き物を作ってる方がいらっしゃるんですね。その方の作品を展示したり。 その隣には3歳の女の子が紙粘土をこねこねこねくりまわして作った作品なんですけれども 「幸せってどういうこと?」ということをお母さんと一緒に言葉を交わしながら粘土をこねこねして作った作品です。一緒に同じ空間にひとつの同じテーマで展示をしました。 次の写真をお願いします。 同じように二つ目は「ふたりでつくる」というテーマで展示したコーナーもありました。 左のものは後藤さんという施設で生活されている方か紙をちぎって貼って、それを支援員の方がちぎった紙をのりで次々貼っていくという、お餅つきみたいな感じで、ちぎって貼ってのりをつけてっていうリズムよく作っていって、 一枚の紙でバーッて覆ったり、あるいは丸い立体の形を作ったり、そういう表現をされてる方がいらっしゃったり。 あるいは右側は現代アーティストの田中光起さんに、田中さんと娘さんと二人で一緒にマスキングテープとクレヨンを使って二人で作ってもらった作品を同じコーナーに展示するということをしました。 障害のある方の表現や創作活動はかなり最近展覧会や展示をして見る機会も増えてきたんですけれども、CONNECTでは障害があるとかないとか、そういう境界をできるだけ取り払いたいなというような思いもあり、 この展示の中では「この人は障害がある〇〇さんです」とか「この人はプロのアーティストの〇〇さんです」ではなく、違う切り口でごちゃ混ぜに展示できないかということを考えて、このような展示をしてみました。 あとは展示ではなくてワークショップもいくつか行いました。 筆談の鑑賞の様子を一枚出していただけたらと思います。 これは美術館で行ったワークショップの様子ですが、筆談鑑賞会というものを初めてやってみました。耳の聞こえないろう者の方をファシリテーターとしてお迎えしまして、 美術館の作品を実際に見ながら声を出さずに一人一本ずつ色の違う色鉛筆を持って、模造紙の上に絵を見て感じたことなどをみんながバーっと言葉やイラストで書いていく。 紙の上で「私もそう思った」とか「どうしてこういう風に感じましたか」とか、紙の上で対話をしながら鑑賞を深めていくというような鑑賞ワークショップというものを行いました。 これもろう者の方に企画の段階から一緒に入っていただいて、どうやったら聞こえる方と聞こえない方が一緒に楽しめるかを事前に当日まで検討して実施をしたという感じです。 アイ・コラボ:ありがとうございます。写真を見てるだけで楽しくなりますね。 松山:この時は小学校の子から大人の方まで年齢もいろんな方が参加してくださって、結構それぞれの方が「そんな風に見てたんだ」みたいな個性が光る書き込みが多くて、そばで見ていてもかなり面白かった取り組みでした。 アイ・コラボ:なるほどです。ありがとうございます。 では次に滝山さん、工夫されている取り組みなどあれば教えて頂きたいです。 滝山:知っている人はよく知ってると思うんですが、「なんだこれは」という人は何だろうと思うかもしれませんが、これはオリヒメという遠隔操作をする分身ロボットです。 元々の目的としては外出困難の方々が、何がしかの形で働けないかとオリィ研究所が作られたこともあり、それを文化体験に使えないかということで今回は、単純に美術館で鑑賞をするということもそうですが、 せっかく岡崎のエリアで美術館や図書館、コンサートホールが一緒にやっているので、これを使って散策をしながらいろんなところを見てまわったり、その中で美術館で絵を見る体験もなかなかできないというか、 これは貴重な意見であったんですが、そもそもあまり想像してなかった体験になったという方もおられたので、そういう方々に見てもらういい機会になったのかなと思います。 具体的には本当に家から出られないような施設の方や、一般にも募って参加しませんかっていう方と、あと京都府京都市の特別支援学級のクラスで取り組んでみたいというような方は、 ある程度コミュニケーションがとれる方がナビゲーターとなって現地を案内して、学校の方からみんなはパソコンとかタブレット使ってロボットを操作して、現地にいる人たちとコミュニケーションとったりするというかたちです。 こういう新しいギミックを使うと、コミュニケーションとる側も障害者じゃなくて面白いものになってしまうので、特にフリーマーケットなんかで一緒に歩いてたりすると、僕らなんかよりはるかに人気者になるわけですね。 スーツ着たおっさんがうしろついて歩いていると、「なんなの。お前ら」って感じなんですけど、可愛いロボットが手や首を振ったり、一緒に喋ったことに対してコミュニケーションがとれたりする。 向こう側は実は家から出れない人がこうやって楽しんでるんですって言ったら、自分たちはこんなもの作って売っていますとかいうことまで話してくれたりとか。そういう体験をうまく作れたなっていうのは、今年やりました。 どれくらいたくさんの人が参加できるかということでいうと、ロボット1台で一人、二人ぐらいが限界というところがあるので、その辺りは今後どういう使い方がいいのかを考えていかなくてはいけないけれど、 障害当事者の参加という意味では今回、ひとつこういう形で純粋に作ったものを楽しんでもらえたのは良かったと思いました。 それ以外にこれは特別支援学級のみなさんに、展示されてる作品も当事者の方が作った作品になりますけれども、そちらを見に来ていただく機会をこれを機に作ったというところで、 いろいろな方が参加できるところは今年特に大きく工夫をしたところです。 もちろん今までの積み重ねで、例えばバリアフリーのラインはしっかりと確認ができるとか車椅子の人来た時の対応はある程度ノウハウができたとか、あるいは今年は通訳の方をお願いするタイミングであったり、 限界であったり、必要な事みたいなところも、それぞれの施設や我々も理解しつつあるから、こういうこともできたのかと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。 オリヒメももちろん映えますけど、スーツ姿の滝山さんも映えると思います(笑) 柴田:アクセシビリティと関係ないところでお話しすると、「このサイトってずっと残り続けるサイトだよね」っていう話が共有されたんですよ。 残り続けるサイトだとしたらサーバーにプログラムをインストールして、ずっとメンテナンスしていかなきゃいけないようなCMS入れるんじゃなくて、静的なHTMLで作っていきましょうよって合意されたので、 そこが技術的には工夫したところです。全然アクセシビリティ・サイクルと関係ないですよね、これ。 滝山:ただ、専門的な話で一番ありがたかったのは、実はモーションロゴですね。このみんなの背景にもあるCONNECTのロゴが実は、ずっとうねうね動いているものをデザイナーさんが最初に創造されてたので。 柴田:これずっと動き続けるとダメだっていうのは…デザイナーの方もご理解も早かったですよね。「こういう理由でずっと動き続けると困る人がいるんですよ」という話をしたらすっと飲んでいただけまして。 そういう一個一個、アクセシビリティに関わることだったら聞いていただけるっていう象徴的な出来事はこのモーションロゴでしたね、確かに。 松山:でも一方で私も一つデザインのことで覚えているのは、webより前にポスターのデザインを決めていこうっていう場にも、たしか柴田さんがいらっしゃったかでご意見を伺ったことがあったかと思うんです。 その時に今我々の背景に写っているこのビジュアルになったんですけど、これはいろいろな色が混ざり合ってるような表現になっていて、 それが「こねこねする」っていう言葉からデザイナーがイメージを膨らませてデザイン作ってくださったっていうのがひとつあって。 でも一方でアクセシビリティ、例えば色の判別が難しい方にとってこれがどういう風に見えるんだろうとか、どこまでアクセシビリティとデザイン性のバランスをとればいいんだろうみたいなところで。 そういう議論になった時に柴田さんがデザイナーの想いとして「これは【こねこね】をこういう風に表現されてるから、これはこの方向で行ったらいいと思います、僕は。」と言っていただいたような気がするんです。 詳細は忘れてしまったんですが。 これは美術館あるあるかわからないですが、わかりやすさを求めていこうとするとデザイン性と必ずぶつかるところが出てくる。そこがすごいジレンマだと思ったところがあって。 ケースバイケースだと思うんですけれども、そこで話し合いをして「デザイナーの意図はこうです」「でもやっぱり見えないものが見えづらい」とかやはり具合が悪いことが起こってしまうというときに そこは専門の方からしっかりご意見聞いて意見交換していく。 これにおいては「この線だったら大丈夫そう」を探っていくことがやっぱり大事だとその時にすごく感じました。だから0か100かじゃなく、その場その場で考えていくことが大事だなと思ったのを思い出しました、今。 柴田:そうですね。 言葉を本当は選ぶべきなのかもしれないんですけれども、「知らないと怯える」いうか、「自分たちがやってることが自分達が知らない誰かを困らせてるんじゃないか」ということを考えてしまうというのは自然だと思うんですね。 そういう考え方は大事な片方で、情報を伝える局面だとそこにどこまで怯えててもいいぐらい怯えていいんですけれども、芸術作品の表現をアクセシビリティがそれを阻害することは、あまりあるべきではないということはあります。 見えにくいなったら見えにくいって事が表現であったりしますし。読みづらいということも、別に読みやすいものを作るためにデザインや芸術があるわけではないこともありますので。 そこはウェブアクセシビリティの世界でも特定の感情を誘因するとか感動とかそういったものについてアクセシビリティがあまり口出しはできないよねっていうことは割と「いろは」の「ろ」ぐらいでやる話かなと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。 これからもこういう工夫であったり取り組みであったりがずっと続いていけばいいなと思いながら聞かせて頂きました。最後に開催後のご感想であったり、 これだけは言っておきたいということがあれば教えて頂きたいです。まずは滝山さんからお願いできますでしょうか。 滝山:今日はありがとうございました。 最初に僕は何でも屋ですって言ったんですけれども、特に専門があるわけではなくて。 逆に言うと、だからこそいろいろなイベントに、いろんな人に来てもらうために何ができるのか、安全に楽しんでもらうために何ができるかを全方向にやっていくのが新聞社、事業部と呼ばれるところのいいところなのかなとは思ってます。 僕だけではなく関わったスタッフは本当に今後役に立つ仕事が出来ているというのがCONNECTの大変だけれどもいい部分です。 webについての知見が今年すごい、柴田さんやみなさんにご意見いただいたり教えてもらったところで、本当に役に立ちました。 CONNECTという事業自体がこれからどうなっていくのかは、文化庁の意向があるのでまだ何とも言えないんですけれども、ただこの形を何がしかの形で引き継いでやっていくことはそもそも望まれてたことですし、 せっかくこの3年間やってきて少しずつ参加いただけるようになってきたので、これからも多くの当事者もそうでない人も皆が楽しんでもらえたらいいなと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。次に松山さんお願いしたいと思います。 松山:今日は貴重な機会をありがとうございました。 本当にCONNECTは「つながる」ということがテーマのプロジェクトですけれども、いろんな人が文化施設に来て、人と文化施設が繋がることもありますし、 文化施設同士がつながることも結構コネクトの事業の特徴だと私は思っているんですね。先ほどの研修会の様子もそうですが、 実はすごく近くにある文化施設同士なんですけれども日頃お仕事を一緒にするとか付き合いがあるかというと、あまりなかったんです。 ですが3年、担当者も変わりながらですけども、一緒に勉強会で学ぶとか同じイベントでご一緒することを通して、やっぱり顔見える関係になってきて気軽に 「こういう時どうしてますか」みたいな相談ができるようになってきたことが、続けてきた大きな成果と思っています。 先ほど「失敗して学んで」と言ってましたけれども、それぞれの施設の中の人たちがそれぞれ毎回企画を考えてやっているので、派手に大きなことはできないんですけど、 通常の仕事もある中でなので大きなことはできないんですが、それでもやっぱり続けることで血肉になって日頃の仕事の中にもフィードバックできていることころは大いにあると思っています。 なので良い形で地域で続けていけると嬉しいと思っています。 アイ・コラボ:ありがとうございます。柴田さんお願いしたいと思います。 柴田:CONNECTの事業において良かったと思うのが、アイ・コラボレーション神戸に関わってもらいたいっていうことで京都新聞に提案をした時にすごい、なかば食い気味にOKが来たんです。 このプロセスに障害当事者を関わらせたいということで、こんなにポジティブな反応が返ってきた。 そしてそれがスルスルと実現していったということがものすごく僕は良い経験をさせてもらったと思っていて、これがとても印象的でした。こんな案件がもっと増えるといいのにと思います。 アイ・コラボ:ありがとうございます。本当に我々アイ・コラボも今回関わらさせていただいてすごい良かったと思いますし、何よりCONNECTについて知ることができたのが一番大きかったと思います。 僕らが知らないだけで地域でがんばっている活動は全国各地であるかもしれない。 今回の祭典のテーマであり、法律も大事なんですけども地域の方々の思いであったり熱意であったりというのが世の中を変えていくんじゃないかというのを、僕は信じたいと思いながらこのセッションを聞かせていただきました。 ではお時間になりましたのでこのセッションは以上とさせていただければと思います。 滝山さん、松山さん、柴田さんありがとうございました。 ありがとうございました。