【セッションタイトル】 「障害当事者の困りごとと受託開発をどう繋げるか」 板垣: では、次のセッションは、クラスメソッド魚見さん、持田さんによる『障害当事者の困りごとと受託開発をどう繋げるか』です。では持田さんよろしくお願いします。 持田: よろしくお願いします はい、クラスメソッドからは 『障害当事者の困りごとと受託開発をどうつなげるか』 というテーマでお話しさせていただききます。 お願いします。 本日は、クラスメソッド株式会社 カルチャー推進室の魚見賢太郎と CX事業本部Delivery部デリバリーマネージャーの 持田がお話させていただきます。 お願いします。魚見: お願いします。 持田: クラスメソッドについてご紹介させてください。 クラスメソッド株式会社は資本金1億円 従業員数600名ほどの企業となっています。 事業内容としては、 AWS等のクラウドの技術コンサルティング、開発、運用 データ分析基盤の技術コンサルティング、開発、運用 アプリケーション、LINEとかiOS等の企画開発、運用 SaaS、Webサービスの企画開発、導入支援、運用 企業向けIT人材の育成や内製化支援 無人店舗技術・キャッシュレス決済システムの企画開発、 運営などとなっています。 本社が先日、日比谷フォートタワーに移転しました。 全部で国内7拠点、海外6拠点があります。 本日はアプリケーションの企画開発に関して お話をさせていただきます。 コロナ禍を契機として、いわゆる デジタルトランスフォーメーションが進んだことは、 障害当事者の方の生活を向上させた側面が あるんじゃないかなというふうに想像しています。 例えば飲食店のテイクアウト予約のデジタル化や ECの進展などがあり、 外出が困難であったりとか 対面のコミュニケーションが困難な方にとっては、 自力での買い物のハードルが下がったんじゃないかな というふうに想像しています。 しかしながら、そうしたオンラインサービスや スマホアプリなどがアクセシブルでないことも 少なくないかなというふうに思っています。 こういう、アクセシビリティに起因する 生活のさまざまな場面における困りごとについて 障害当事者の方々が意見を表明されことを 目にすることがありますが、 そのような勇気ある意見表明が行われても 残念ながらそれが届いた事例はあまりないかな というふうに思っています。 これはアクセシビリティ・サイクルが 途切れている状態かなというふうに思っています。 ここでサービスを大きく2つに分類してみます。 自社開発と受託開発です。 自社開発というのは、サービスを提供する企業が 自分たちでエンジニアを雇用して 自社でサービスの開発とかメンテナンスをおこなう サービスです。 受託開発は、サービス提供企業が他社に開発を依頼して 私たちクラスメソッドのような お客様の事業課題を解決する技術力を提供する企業が 受託して開発を行っていくスタイルです。 最近は、自社で開発しているサービスを提供している 企業の中から アクセシビリティを向上させる取り組みを加速させるところが 複数出てきたかなというふうに思います。 それらは、すごく歓迎すべき動きなんですけども 障害当事者の方々が使われるサービスには 受託開発によるものも多くあるかなというふうに思います。 先日のMicrosoftのAbility Summitのあるセッションでは 世界人口の約15%が障害を持っているんだけども 障害のある顧客とか従業員へのサービス提供に 注力している企業はわずか4% というデータが紹介されていました。 それでは受託開発を行ってる私たちのような企業が 障害当事者から「困っている」というバトンを 受け取った時に、どのようにすれば 受託しているプロダクトのアクセシビリティを 向上させることができるのでしょうか。 今日はそこについて提言をおこないたい というふうに思っています。 まず、ご説明に際して、受託開発の 大まかな流れをご説明します。 最初に行うな行うのがプリセールスです。 これは開発の契約を締結する前に実施する作業で、 ここで、お客様から開発したい内容をうかがったりとか それに対して開発する我々からプロジェクトの提案とか 見積もりの提示などをおこないます。 開発契約を締結した後は要件定義を行います。 これは開発する内容を具体化していく作業です。 その後で、画面などのデザインを行います。 その後、開発する内容の詳細設計を行って 実際にプログラミングを行う実装に移ります。 実装が終わったらテストを行ってから リリースという作業をします。 リリースを終えると、 皆さんが実際にサービスを使えるような形になります。 受託で開発するサービスをアクセシブルにするために 先ほどご説明した受託開発の各段階で どういうことをすべきなのか ということについて順にご説明していきます。 まずプリセールスと要件定義のフェーズで行うべきことです 全体の中ではここのフェーズが一番重要かな というふうに思います。 まず最初に お客様からこういうことを開発してほしいという 依頼内容の中にアクセシビリティが考慮されてない場合は 私達の方から、プロジェクト全体で アクセシビリティの視点を持つことの重要性を 説明することが必要かなというふうに思います。 開発するサービスで、他社との差別化をどう図るか という視点があるんですけども、 そこに、できるだけ多くのユーザーが使えること というところを目指すことを提案するであったりとか、 その後の、デザインとか実装とかテストのフェーズで アクセシビリティを向上させる作業が必要であることを ご理解いただくことが必要です。 次に、開発するサービスでのアクセシビリティの方針を定めます。 これは例えば、アクセシビリティに関する JIS規格とかWCAGで定められているレベルとか 対応度を示します。 最後に、ここまで検討してきた内容を プロポーザルとか見積書とか要件と一緒に盛り込みます。 その次のデザインフェーズでは WCAGのガイドラインに沿って いくつか必要な作業があります。 例えば、情報を伝えるために 色が唯一の手段になるようなデザインを避けるようにします。 あと、よく話題になるんですけども UIとかコントロールなどで、前景色と背景色の コントラストを確保したデザインにします。 ダークモードがデザインも重要かなと思っていまして このダークモードっていうのは 羞明と呼ばれる、ディスプレイの眩しさが痛みと感じる ユーザーにとっては必要かなというふうに思っています。 WCAG2.1には、そのほかに キーボードフォーカスの可視化とか デザインに関する達成基準が いくつかありますので 方針で決めたWCAGの適合レベルの達成基準にそって デザインに反映すべき項目を洗い出して対応していきます。 次の画面実装のフェーズでは、 デザイン以外のさまざまな事柄に対応する必要があります。 Webアプリケーションの場合は 画面全体を正しいHTMLでマークアップすることが必要かな というふうに思います。 最近のReactとかのフロントエンド実装とかだと コンポーネントと呼ばれる部品ごとに アクセシビリティのチェックが行わることはあるんですけども 画面全体のDOMなどが 妥当な文章構成になっているのか というところの確認が 重要かなというふうに思います。 あと、画像などの非テキストコンテンツに alt属性のような代替テキストの設定は必要ですし、 すべての操作がキーボードで操作できるような対応も必要です。 WCAG2.1の方には、その他にも フォームへのラベル設定とか single Aであったとしても 必要な対応がいくつかありますので、 適合レベルの達成基準に沿った対応をやっていく必要があります。 テストフェーズになると ここまで実装を行ってきたものについて、テストをしていきます。 大きくは単体テスト、E2Eテストがあるんですけども 単体テストは、いわゆるコンポーネントと呼ばれる 画面部品単位でのアクセシビリティのチェックを行います。 ある程度、画面の開発が進んだら E2Eテストという段階でアクセシビリティテストをします。 これはプログラムでブラウザを自動制御して 画面全体のDOMをチェックしたりする方法が用いられます。 可能であれば 障害者によるユーザーテストができれば理想かな というふうに思います。 まずは、MVPといった、プロトタイプの段階で 最初の意見をうかがって、 完成後に、シナリオテストができればいいかなと思います。 テストしていただく当事者の方が、 どのような障害をお持ちなのかによっても お困り事が異なるので、 製品の方向性とかとともに シナリオの検討が必要かなというふうに思います。 無事にサービスのリリースが終わって 本番運用のフェーズに入った後もやるべきことがあると思います。 ユーザーからのフィードバックを受ける仕組みと フィードバックを改善に生かす体制かなと思います。 これがJIS X 8314-3の附属書にもあるんですけども 「公開した後も高齢者・障害者からの意見収集に努めて 問題が指摘された場合には対応方法を検討して可能な ことから対応する」ようにということが求められています。 例えば障害当事者の方が リリースされたサービスのアクセシビリティの問題に直面して 「障壁を除去してほしい」という お申し出をフィードバックしていただいた場合には 差別解消法に基づいて 合理的配慮の提供が、これからは求められます。 そういうことも含めて、受託開発の場合は お客様にそういう体制を整備していただく 必要があるのかなというふうに思います。 先日、障害者差別解消法が改正されまして 2024年4月(発言の1月誤りです)から施行されることが決まりました。 これから民間企業も含めて より多くの受託開発サービスにおいて 環境の整備としてのアクセシビリティ向上の必要性は 高まるかなというふうに思っています。 私たちも、これから受託開発させていただくお客様に アクセシビリティの重要性を説明していって、 より多くのアクセシビリティ・サイクルを つなげていきたいな というふうに思っています。 以上です 板垣: はい、持田さん、ありがとうございます。 見事に、今年の祭典のテーマである アクセシビリティ・サイクルというものに つなげていただいて、 アクセシビリティの重要性を説明するであったりとか 障害当事者の意見を聞いて そういうサイクルを回していただくっていうのはやっぱり僕ら 当事者にとってもすごいありがたいことですし もう今後ほっともっと生活しやすいより良いものがたくさん できるんじゃないかなという風に思いながら聞かせていただきました。 ありがとうございました。 持田: ありがとうございました。 はい。 ではあらためて、魚見さん、持田さん、 ありがとうございました。 魚見、持田: ありがとうございました。